上毛電鉄に新型車両3編成 9億円は全額公費補助 メトロ日比谷線03系を「800形」に改造

上毛電気鉄道は、東京メトロ日比谷線で運用していた元03系車両を改造した新型車両「800形」を合わせて3編成導入し、老朽化した現行車両700形を順次置き換えます。

上毛電気鉄道の現行車両である京王電鉄井の頭線の元3000系を改造した700形電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)
上毛電気鉄道の現行車両である京王電鉄井の頭線の元3000系を改造した700形電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)

グレー帯改め「上電カラー」に

群馬県の赤城山南麓に広がる田園地帯や住宅地を運行する上毛線には現在、京王電鉄が井の頭線で3000系として運用していた車両を改造した700形が8編成16両在籍しています。このうち3編成6両について、2025年度までの3年間で順次、800形に置き換えにより廃車を進める計画です。800形の最初の1編成は2024年2月下旬をめどに営業運転に就く予定です。

東京メトロ03系は、旧帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が1988年(昭和63年)から日比谷線に導入した車体長18m、片側3扉の車両です。転機となったのはホームドア設置計画で、同線は相互乗り入れ車両を含めて20m長・4扉に統一する方針が決まり、03系は2020年2月をもって営業運転が終了しました。

上毛電鉄が新たに導入する800形は03系をベースとしつつも、メトロ車両(本社:東京都台東区)が改造を担当し、VVVFインバータ制御装置や電動空気圧縮装置などの主要機器は新製されます。冷房装置には環境負荷の少ない代替フロンが使用され、走行機器も省エネルギー化が図られているため700形に比べて消費電力量を削減できます。

車内には案内表示器や液晶運賃表示器が設置され、バリアフリーに対応した車椅子・ベビーカースペース、セキュリティ向上のための防犯カメラの取り付けなど、旅客設備の充実が図られます。03系時代は日比谷線の路線カラーであるグレーの色帯をまとった外観で親しまれてきましたが、転籍にあたり緑色・赤色を基調とした上毛電鉄オリジナルのデザインへと変更されます。

(上毛電気鉄道が導入する新型車両800形の主な仕様、外観デザインのイメージなど詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】上毛電気鉄道が導入する新型車両800形の主な仕様、外観デザインのイメージ

元「京王井の頭線」の現行車両は車齢50年超え

上毛電鉄はかつて、東武鉄道から譲り受けた冷房装置の付いていない旧型車両が用いられていました。1998年(平成10年)11月から運用を開始した700形車両への統一により大幅に近代化が図られましたが、最も古い車両で1964年(昭和39年)製造と車齢はすでに50年を超えており、老朽置き換えが課題となっていました。

クルマ社会の進展や人口減少を背景に上毛線の利用者数は1965年(昭和40年)をピークに減少を続け、かつては1日平均950万人を上回っていた1日平均の輸送人員は近年、150万人前後にまで低下しています。

しかし、現状でもバスでは輸送できない規模の通学・通勤利用があり、群馬県と沿線の前橋市・みどり市・桐生市は1998年(平成10年)度から財政支援を行って路線存続を支えています。民間企業としての上毛電鉄の体系は維持しつつ、車両や線路設備などの近代化整備にかかる費用や、人件費・修繕費などに対する赤字補てんを基本的に公費で賄う仕組みで、「群馬型上下分離方式」とも呼ばれます。

2023年3月に決定した向こう5年間の支援内容には、2023〜2025年度に車両更新費としてそれぞれ3億円、3年間合計で9億円を全額補助することが明記されています。拠出元は国・県・沿線市でそれぞれ1/3とされ、鉄道軌道輸送対策に対する国庫補助金を活用することを前提としており、沿線市の負担割合は人口や財政規模などにより定められています。

一時はオリジナル車両の発注を模索しているとも報じられていましたが、路線の仕様に合う中古車両の導入を検討した結果、東京メトロからの譲受による置き換えに落ち着いた格好です。

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